流行りの筋膜リリースは良くない?!

そもそも、筋膜リリースとは?

昨今、メディアを通して至る所で流行中の筋膜リリース※というワード。
巷ではフォームローラーというツールを用いて自分で行なったり、セラピストやトレーナーが手技で提供していたりします。
※筋膜を外部から揉み解したり、押したりすることで筋膜の歪みや癒着を取り、痛みを改善したり動きを高めると言われています。

私自身もパーソナルトレーナーとして、
「筋膜が…」「癒着をリリースして…」
といった表現を以前はよく使っていましたし、

お客様が抱える慢性的な痛み(腰痛や肩コリ、坐骨神経痛など)の改善や、
エクササイズの前に関節可動域(柔軟性)を向上させる為のアプローチとしてよく用いていました。

 

ですが、最近よく考えるんです。
フォームローラーや手技で本当に筋膜自体をリリースする事は出来るのか?…と。
大事な部分を見落としているんじゃないの?…と。

※写真はイメージです

フォームローラーや手技で筋膜をリリースする事は難しい

筋膜リリースに対して投げかけた疑問に、科学的根拠をベースに紐解いてゆきたいと思います。

そもそも筋膜には2種類あり、浅筋膜と深筋膜の2つに分けられます。

浅筋膜とは皮下脂肪の間にあり、脂肪や皮膚と同じく全身を覆っており、
深筋膜とは皮下脂肪の下にある筋肉自体を覆っている膜になります。

ここからは主観的で勝手な印象に過ぎませんが、
何となく筋肉を覆っている深筋膜に対して、リリースが行われているものだと思っているのではないでしょうか?

なぜそう問い掛けたのかと言うと、
【筋肉と筋膜の間の癒着をリリースする】
とメディアや治療院でそう説明している事が圧倒的に多いからです。

私も以前まではそう捉えていましたし、お客様にそう説明していました。

結論としては手技やフォームローラーで深筋膜をリリースすることは非常に難しいと言えます。

なぜならば、分厚い足裏の足底筋膜や太ももの横にある硬い大腿筋膜を変化させるには、852kgの荷重が必要だという科学的根拠が示されていますし、
仮にですが、柔らかい部位の浅筋膜でさえ60kg以上の力を掛けないと動いてくれません。

上記の様な科学的根拠をベースに考えると、
手技やフォームローラーで深筋膜をリリースするこれは現実的でしょうか?

むしろリリースできるだけの「力」を加えたら他の組織(皮膚や脂肪、神経など)が破壊されてしまいそうですね…

話が少し逸れてしまいますが、
私自身、筋膜に対する既存のアプローチに疑問を感じ、2019年4月にアメリカでヒトの冷凍献体を用いた解剖実習を受講して来ました。

その際、筋肉を覆う深筋膜を上から押してこすってみたり、手で掴んで引っ張ってみても、ほとんど組織的な変化は起こりませんでした。
※ちなみに私はトレーナーという職業柄、平均的な一般男性より力は有ると思います。

個人的な経験則では有りますが、
解剖研修での出来事は本当に衝撃的でした…

話を元に戻して、昨今のメディアでは筋膜リリースのことを「筋膜はがし」といった名称で紹介をしていたりしますが、深筋膜を引きはがす事はどう考えても不可能ではないかと思います。

もしも実際に深筋膜をはがしたら、物凄い大ケガですね…

 

では、なぜ現実的ではない筋膜リリースで身体に変化が起こるのか?

大きく分けて理由は2つです。

ひとつは広汎性侵害抑制調節という現象です。

筋膜リリースという名の新しい痛みを、
フォームローラーやトレーナー・セラピストの手技を用いて与えることで、元からあったコリや張り・痛みが一時的に感じなくなる現象です。

つまり痛みを痛みで散らしているわけですね。

これは一時的に身体が軽くなったり、スッキリしたりといった効果を感じますが、
根本的な解決を図っている訳ではないので、与えた痛みが無くなれば元の状態に戻ります。

それどころか強い痛みで上塗りしようとすれば、
毛細血管や細い神経、リンパ管、皮膚の破壊が起こってしまい、当初より余計に酷くなってしまう可能性もあります。

良かれと思って行った事が逆効果だったなんて、結構ショッキングですよね…(>_<)

※写真はイメージです。こういった製品には全く非はなく、使う側の人間に問題があるのです。

もう一つの理由は【皮神経】が影響を受ける為です。

何度も申し上げますが、フォームローラーを用いたり、トレーナーやセラピストが行う、いわゆる筋膜リリースでは筋膜がどうにかなっているのではなく、
筋膜より浅い皮膚にある皮神経と呼ばれる神経が影響を受ける為、身体に変化が起こります。

皮神経には受容器と呼ばれる数多くのセンサーがあります。

センサーの種類は押された力に反応するもの、伸ばされたときに反応するもの、触った時だけ反応するものなど様々です。

それらのセンサーから脳に送られた情報によって、脳の認識が変わり、自律神経の反応が変化することで血流が増加し、皮神経の血液循環が変化したり、動かしながら行えば動作時の感覚も変化したりします。

以上の理由から、痛みやコリ・張りなどが減って身体が軽くなったり、スッキリしたりする訳ですね。

筋膜リリースによって身体がカタく、痛みやコリがひどくなる?!

先にお話した通り筋膜を一生懸命リリースしようと、
突起がついた硬いフォームローラーで全体重乗せたり、やみくもに棒や石の様な器具で長い時間ゴリ揉みすると、かえって皮神経が傷ついてしまい、
以前よりも痛みやコリがひどくなったり、身体が硬くなってしまう可能性がありますので注意してください。

※ツールは使い方次第で薬にも毒にもなります。